ニョニャ・クバヤ

贅沢を好んだプラナカンたちの衣装は、オートクチュールの1点ものが基本。

女性は、インドネシアの刺繍入りの半透明のブラウス、クバヤ(Kebaya)を身に纏い、スカートにはサロン(Sarong)と呼ばれるインドネシアのバティックを巻きつけていました。上下合わせて「サロン・クバヤ」と呼ばれるこのスタイルが、ニョニャの正装となったのは比較的新しく20世紀の初頭になってからです。元来保守的であったニョニャたちがその昔、身に着けていたのは「バジュ・パンジャン」と呼ばれる身幅にゆとりのある(ちょっと羽織に似た感じ)の草木染でできた丈の長いチュニック風のものに、サロンを合わせるというマレー・スタイルの衣装が主でした。しかしオランダの影響を受け、洗練された刺繍が施されるようになったインドネシアのクバヤに魅せられてから、時代とともにクバヤがニョニャの衣装として定着したのです。

初期のクバヤは生地も厚めで、純白の木綿生地にヨーロッパ風の清楚なレースのふちどりがある、どちらかというとシンプルな感じのものでした。その後、ニョニャたちの好みに合わせてマレーにはない動物柄や、様々な模様を描いた手の込んだ刺繍が施されるようになり、色とりどりの生地も透けるように薄くなっていきました。

そんなニョニャ・クバヤの特徴は、短めの袖と丈に、体の線をぎりぎりまで描いた女性のボディーを強調したもの。これはかえって体を美しく細めに、特に胸の小さな女性にはボリューム・アップして見えるとか。短めの袖にもニョニャならではのストーリーがあります。プラナカンたちは普段、食事をマレー式に右手で食べて
いたこともあり、料理が袖にくっついてしまうのを避けるため、できるだけ袖口を細く短くしていました。もうひとつ、見栄っ張りの多かった彼らがブレスレットやら指輪やらの宝石を長い袖で見えなくなることがないように、という配慮もあったそうです。ちなみに、クバヤにはボタンがなく、その代わりにダイアモンドなどでできた「クロサン」と呼ばれる宝石を連ねたものでクバヤを留めていました。どこまで派手好きなのか、一瞬脱力です。

私たちが思うニョニャ・クバヤの最大の魅力は、今の時代ブラウス代わりにジーンズと合わせても充分お洒落に着こなせることでしょう。 

スカートの役目をするニョニャの腰衣「サロンSarong」は、インドネシアの染め布バティックBatikです。マレーシアでもBatikが制作されていますが、歴史やクオリティー、洗練度がまったく違います。

特にプラナカンが好んだのは、インドネシアの北岸に位置する「プカロンガン」という場所で作られた最高級のバティック。もちろん1点ものです。しかも著名な作家が制作したサイン入りのデザイナーズ・アイテムが大のお好み。競うようにサイン入りのバティックを特注したといいます。

プカロンガン製のバティックは、ヨーロッパのモチーフを取り入れた「ブケタン」という花束模様を描いた華やかな柄が特に有名で、また、ヨーロッパで流行していた花鳥風のシノワズリーもの、古典的な中国の柄など様々です。プラナカンが好んだのは花柄が多かったようですが、中でもすべての空間を埋め尽くす非常に緻密な点描描写で描かれたものなど、まるで1枚の絵のように芸術的なバティックが大人気でした。色合いもサーモンピンクや淡いブルーなど、プラ

バティック

ナカンの器を思わせるフェミニンなパステル・カラーのものから、渋い濃紺など実にバラエティーに富んでおり、色合いや柄によってクバヤと同じくTPOや、着る年代に決まりがあったようです。

ちなみに「サロン・クバヤ」とは言いますが、決して「クバヤ・サロン」とは言いません。プラナカンの重鎮に聞くと、「はるか昔、バティックが身頃の代わりをしていた時もあり、クバヤに比べてバティックの歴史は古く、格もバティックのほうが断然上」ということで、必ずサロンを先に、「サロン・クバヤ」と呼ぶのだそうです。

サロンとクバヤのコーディネイトについては厳密な決まりはありませんが、上下まるで逆の色を持ってくるか、もしくは両方にある色を1色合わせたり、同系色で合わせたりするそうです。 どこか帯と着物のコーディネイトに似ていますね

Rumah Bebeのモダン・クバヤ。日本でもパーティ着などにおすすめ、ウェディング・ドレス用にデザインされたものもある。
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▲ペナンのクバヤ・テイラーの第一人者Lim Swee Kimさんのアンティーク・コレクションの一枚
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