「美をめでる」ということに重きを置いたプラナカン文化の中で、女性が美しいものをつくり上げることは、その家の躾の良さを表し忍耐力を育むなど、将来良き妻になるためにも最も大切な条件でした。ニョニャたちは花嫁修業のためには料理だけでなく、刺繍・裁縫の技能も厳しく教え込まれたといいます。

はるか昔のプラナカン刺繍は、中国やインドのシルク刺繍や金糸・銀糸を使った刺繍が盛んでしたが、18世紀になりヨーロッパからキラキラと輝くガラス・ビーズがもたらされると、たちまちトレンドはビーズ刺繍に移行しました。しかもそのサイズが半端ではありません。どうやって糸を通すの?と思えるほど極小の0.5ミリサイズのビーズを使い、「カス・マネ(Kasut Manek)」と呼ばれるビーズのサンダルやスリッパを作り上げたのです。

その後、人気のビーズはいたるところに使われるようになり、化粧箱やハンドバッグ、婚礼用のハンカチや枕カバーなど、目にも鮮やかな色彩とその精密さにため息がもれそうなものばかりです。その多くは3世代にわたって使えるようにとつくられたものですが、買うとなると大変高価なもので、今でもニョニャたちのステイタス・アイテムのひとつになっています。中でも特に精密に作られたアンティークのものになると、美術館などへ飾られるコレクション・アイテムになっています。

ニョニャの刺繍

刺繍の柄も洒落ています。

プラナカンを象徴するアイテムである鳳凰や牡丹(良き結婚と高貴や富をあらわす)といった中国的な柄以外に、バラの花や白雪姫などヨーロッパのおとぎ話のモチーフなどもふんだんに使われ、思わず手にとってしまいたくなるほど愛らしいデザインのものばかり。

はるか昔のビーズ刺繍でも今もなお、その輝きを放っているのには驚かされます。きっと刺繍の技術だけではなく、ビーズ自身に施された数々の秘密があるのかもしれません。

ちなみに男性もビーズのサンダルを履くことがあったそうです。とあるババに聞くとビーズ・サンダルを履くとオカマに見られちゃうのよね〜との意見もありました。それもまた素敵なのでは?

▲ シンガポールのショップ、Rumah Bebeのビーズ・サンダル。既製品も用意されているが、プラナカンの人たちは特注オーダーをするのが普通。料金はビーズのサイズによって異なる。 
▲ Rumah Bebeの商品。
可愛らしいペンケース。
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